投稿者: 西澤倫 | 査読者: 遊佐麻友子 | 日付: 2021-06-21

この研究の背景
- 話者の流暢さを聞き手が評価する際、発話スピードとポーズ(休止)を重要視することがわかっている。
- ポーズには、um, uhなど日本語で言う「ええっと」など音声を伴う有声ポーズと、無音の無声ポーズがある。
- ポーズ位置に関して、英語母語話者は節外でポーズをとる傾向があるが(例:I liked it (ポーズ) when I was a kid)、非英語母語話者は節内でポーズをよくとる傾向がある(例:I liked (ポーズ) it when I was a kid)。
この研究の課題と意義
- ポーズが流暢さ評価へ影響を及ぼすことは報告されているが、無声ポーズの頻度、長さ、分布、位置が流暢さに影響するかに関する研究は少ない。本研究は、2つの実験を通してこの問題を探究した。
調査の方法
- 実験1
- 「大学(院)での専攻」と「暇な時になにをするか」という質問について、37人の韓国人英語学習者(初級〜上級レベル)と6人の英語母語話者の流暢さを、46人の英語母語話者が9段階で評価した。評価の際は、英語の習熟度合いではなく、発話速度、ポーズ、言い直し等の流暢さの特性に注目するように指示が与えられた。この評価と音声分析から得られた流暢さの特性との関係性が調査された。
- 実験2
- 実験1と同じ質問に対して12人の韓国人英語学習者(実験1より)と12人の英語母語話者が回答した発話サンプルを、92人の英語母語話者が流暢さを9段階で評価した。
- 3条件(ポーズなし、節内ポーズ、節外ポーズ)を用い、無声ポーズの長さを人工的に調節した。ポーズなし条件では、音声編集で無声ポーズの長さを短縮し(約150ミリ秒)、節内ポーズ条件と節外ポーズ条件では5つのポーズ(各600ミリ秒)を挿入した。
結果
- 実験1
- 節内の無声ポーズの頻度が高いほど、話者は流暢ではないと評価された。また、節外での無声ポーズの頻度も流暢さの評価に負の影響を示した。1分あたりの無声ポーズの数(節内外問わず)と平均的な無声ポーズの長さも流暢さの評価に負の影響を示したが、節内ポーズと節外ポーズに比べて流暢さとの関係は弱かった。
- 実験2
- ポーズなし条件の音声は、最も流暢であると評価された。また、節外ポーズ条件の音声は、節内ポーズ条件の音声よりも流暢であると評価された。
実用的意義・示唆-この結果は何を意味するのか?
本実験は、節内の無声ポーズが流暢さ評価に影響する重要な要素であることを示した。これは、教育の場面では、節内のポーズを減らすために、コロケーションや定型表現などを利用したスピーキング練習を十分に行うことが必要であることを示唆する。また言語評価(テスト)の場面では、自動評価システムを利用する際、これまで考慮されなかったポーズ位置も考慮することが自動評価システムの改良に繋がることも示唆する。
論文情報: Kahng, J. (2018). The effect of pause location on perceived fluency. Applied Psycholinguistics, 39(3), 569–591. https://doi.org/10.1017/S0142716417000534